新聞社の漢字制限 (五の20)


  大正十四年五月一日、大阪朝日と大阪毎日の二社は「新聞用漢字の制限」と題する一文と「常用漢字音列表」とを掲げ、漢字制限の實行を期した。その漢字數は、二千四百九十字で、「勅語とか法令とか又は地名人名等の固有名詞など已むを得ぬものゝ外は一切この制限を出でぬことにした」のであるが、「こゝに最も難かしいのは廣告文」であるとして、廣告主の協力を要望してゐる。

  これとは別に.十四年一月より東京の朝日、讀賣、報知、日日、萬朝、中外商業、國民の七社(後に,東京毎夕、東京毎日、中央が加はり十社となる)は、漢字制限について協議を重ね、臨時國語調査會の「常用漢字表」から三十一字を除き、新たに百七十九字を加へた二千百八字の常用漢字を選定すると共に、「漢字表にない文字は假名で書く」が、詔勅、法令、日本及び支那の固有名詞、引用文などは例外とするといふ申合せを行ひ、大正十四年六月一日、「文部省常用漢字を基礎として協同調査の結果、約六千に及ぶ現代新聞紙の使用漢字を約三分の一に限定することができました」「この制限はできるだけ廣告欄にも及ぼしたい考であります」といふやうな「漢字制限に關する宣言」を發表し.各新聞社ともその實行を期したが、數年足らずにして守られなくなつてしまつた。

 


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