福永の『國語國事問題』

松岡の『日本言語學』(五の23)

  大正十五年二月、幅永恭助の『國語國字問題』が刊行された。本書の内容はいづれも雜誌その他に發表されたものであり、その主なものは既に紹介した。

(ローマ字採用を主張する一部分を中略)

  同十五年七月、松岡靜雄は『日本言語學』を刊行し、その中で、ローマ字について

* 要するに日本の語音を最よくあらはす文字は日本字(即ちカナ)の外はないのである。ローマ宇で日本語を書けといふのは發音の根本を改めよといふと同じことで、ローマ字の發音を日本化 ―― 我々の祖先が漢字に施したやうに ―― せぬ限り、我々の語音を之でかき表はすことができるものではない。或は近い音を寫し得ることもあらうが、結局西洋人の日本語で、日本人の日本語にはなり得ない。鸚鵡よく人語を學べども鳥聲たるを免れぬといふことを我ローマ字論者は知らぬらしい。

と述べてゐる。

 


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