文字文化展覽會 (六−20)

「カナモジカイ」は十年四月三日より五日まで、長岡市立圖書館で、八月五日よリ八日まで、尼ケ崎市で「カナモジ展覽會」を開催すると共に、「國語協會」と共同で十年七月には日本橋三越で、十月には大連と東京中央大學で、十一月には横濱市でそれぞれ「文字文化展覽會」を開いてゐる。この展覽會については、同十年十一月に刊行された『文字文化展覽會出品物解説』によつて知ることが出來る。それによると、展覽會は文部省後援で行はれ、七月二十五日には、高松宮殿下、松田文部大臣、兒玉拓務大臣が參觀してゐる。また、展示の力點は、 文字の發生と推移を示し、文字文化と現代文明との相互關係を明かにし「改善スベキ   點ニ  タイシテワ、 文字ノ  ウツリカワリ  ノ性質     ニ  テラシテ、  ドノヨウニ   ミチビクベキ  カ  ヲ  カンガエル  ト  ユウ   點  ニ  アツタ ノデ   アル」と、甚だ體裁のいいことを言つてゐるが、詰るところ假名文字とカナモジ・タイプライターの宣傳を文部省後援でやつたわけである。例へば、「漢字ワ   學問ノ  ミチ ヲ  サエギル」「漢字ヲ  オシエル   ノニ  コノ  多額ノ  費用」「漢字ノ ヨミカエ ノ   ワズラワシサ」「ムズカシイ 漢字ワ  ヤク  ニ   タタナイ」「コンナ  バアイ  ワ  カナ  デ   カケ」「舊カナヅカイ  ワ   オボエキレナイ」「ヨコガキ  カタカナ  ニ   アラタメル   順序」といふやうな標語を掲げて、繪入りの説明を行つてゐるわけであるが、その標語から内容を察することが出來るであらう。更に會場においてタイプライターの實演を行つてゐる。このやうに一團體の主義主張が文部省の後援で宣傳されるのは、眞に憂ふべきことで、國民を欺くことになる。

  また十年八月には漢學界の團體である「斯文會」は同會制定の常用漢字を發表してゐるが、それは臨時國語調査會の干八百五十八字に千七百二十八字を加へた、合計三干五百八十六字より成るもので、今までに發表された漢字表としては最も數の多いものである。

 


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