當用漢字表の補正案(七の23)

 昭和二十八年二月、新聞社を代表する國語審議會委員の歩調を統一する必要から、日本新聞協會では、十六社から用語擔當者の出席を求め、東京で第一囘の新聞用語懇談會を開催した。その際、當用漢字の補正を審議會に具申することになり、日本新聞協會事務局は、會員全社に對し當用漢字補正に關する意見の提出を求め、十社の意見を集計整理して國語審議會に提出した。それによると、當用漢字表より削除すべきものとして擧げられた漢字は五十一字、逆に補足すべきものとして擧げられた漢字は百六十六字に達してゐる。
 國語審議會の漢字部會(部會長・原富男9は。二十七年七月から二十九年二月までに二十六囘の部會を開いて審議した結果、三月十五日の第二十囘總會を經て「當用漢字表審議報告」についてを發表してゐる。この補正案は「將來當用漢字表の補正を決定するさいの基本的な資料となるもので」「この漢字部會の非常な努力によって、當用漢字表が全體的に妥當なこともわかった」と説明されてゐる。當用漢字表より削る字は「且丹但劾又唐嚇堪奴寡悦朕濫煩爵璽箇罷脹虞謁迅逓遵錬附隷頒」の二十八文字で、加へる字も「亭俸偵僕厄堀壌宵尚戻披挑据朴杉棧殻汁泥洪涯渦渓矯酌釣斉竜」の二十八字である。また「個(コ)」に「カ」の音を加へ、「燈(トウ)」を「灯」に改め「ヒ」の訓を加へてゐる。この補正案作成の意圖が當用漢字表を固守することにあつたことは、審議を始めるに當り「當用漢字表を、その制定當時の精神にそって守りぬくことを部會の基本態度として確認する」といふ申合せをしてゐることから明らかである。

 


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