法令用語改正要領とローマ字綴方の統一(七の28)

 國語審議會の法令公用文部會(部會長・千種達夫)は、二十七年七月から二十九年二月までに二十囘の會合を開いて原案を作成し、三月十五日の第二十囘總會の可決を經て、同日「法令用語改正例」と「法令用語改善についての建議」とを内閣總理大臣に建議してゐる。この建議は十月七日の事務次官會議で採擇され、同二十九年十一月二十五日、内閣法制局は「法令用語の改正の方針」と「法令用語改正要領」とを各官廳に通達してゐる。その例を二、三擧げると、「詐欺、詐偽」を「偽り」、「規制、規正、規整」を「規制」、「消却、銷却、償却」を「消却」、「享受」を「こいねがう」、「誘拐」を「かどわかし」、「酒精」を「アルコール」、「強姦」を「ごうかん」、「繋留」、「洗浄」、「捺印」を「押印」に改めてゐる。
 またローマ字調査分科審議會(分科會長・佐野利器)は、二十七年七月から二十八年二月までに九囘の會議を開いて原案を作成し、三月十二日の第十八囘總會に提出した。同「ローマ字のつづり方」は總會で可決され、同日文部大臣に建議された。右の建議に基づき、内閣訓令・告示第一號を以て、二十九年十二月九日「ローマ字のつづり方のつづり方の實施について」と「ローマ字のつづり方」とが公布され昭和十二年九月二十一日付の内閣訓令第三號が廃止された。今囘の綴方には第一表と第二表とがあり、第一表は、ダ行にザ行と同じ「zi,zu,zya,zyu,zyo」を用ゐる外は日本式ローマ字綴方と同一のものd、第二表は「sha,shi,shu,sho,tsu,cha,chi,chu,cho,fu,ja,ji,ju,jo,di,
du,dya,dyu,dyo,kwa,gwa,wo」から成ってゐる。またその「まえがき」には「一般に國語を書き表わす場合は、第一表に掲げたつづり方によるものとする」「国際的關係その他從來の慣例をにわかに改めがたい事情にある場合に限り、第二表に掲げたつづり方によってもさしつかえない」とある。

 


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