「送󠄁りがなのつけ方」(7―37)

 國語審議會の正書法部會(部會長・原富男)は、昭和三十二年二月󠄁より三十三年十月󠄁までに二十六囘の會合を開き、「送󠄁りがなのつけ方」と「『送󠄁りがなのつけ方』用例集」とを作成󠄁し、十一月󠄁十八日の第三十七囘總會に提出した。總會は同案を議決し、同日文󠄁部大臣に「『送󠄁りがなのつけ方』について」を建議してゐる。右の建議案に對し、各方面から反對意見が出されたが、それを默殺し、建議案に多少の修正を加へ、翌󠄁三十四年七月󠄁十一日、內閣訓令・吿示第一號を以て公布された。その「『送󠄁りがなのつけ方』の實施について」には、戰後の國語政策により「日常使用する漢字の數・音訓・字體が整理され、また、かなづかいの困難も少なくなった。しかしながら、當用漢字・現代かなづかいの制定の趣旨の徹底を圖るためには、さらに送󠄁りがなのつけ方を整理して、その標準を定めることが必要󠄁である」とある。また「送󠄁りがなのつけ方」の方針として「活用語およびこれを含む語は、その活用語の語尾を送󠄁る」「なるべく誤󠄁讀・難讀のおそれのないようにする」「慣用が固定していると認󠄁められるものは、それに從う」の三ヶ條が學げられてゐる。

 通󠄁則一には「動詞は、活用語尾を送󠄁る」とあるが、「表わす、行なう」等を例外とし、通󠄁則二に從ふと「浮󠄁かぶ、聞こえる」となり、通󠄁則六によると「移り變わる、思い出す」となり、通󠄁則十六によると「頂、隣」となるが、「後ろ、情󠄁け、斜め」等は例外、 通󠄁則十九によると「山登り、心構󠄁え」となるが、「落ち着き、取り締まり、向かい合わせ、打ち合わせ會」等は「落着き、取締り、向い合せ、打合せ會」のやうに送󠄁假名を省いてもよいとされ、通󠄁則二十により「慣用が固定していると認󠄁められる」「受󠄁付、取扱󠄁所󠄁、待合室、乘組員」等は「原則として送󠄁りがなをつけない」と規定されてゐる。以上のやうに例外・許容が非常に多く、極めて煩雜なものであつたが、新聞社は多少の修正を施して實行に踏切つた。しかし、新聞社により例外・許容の解釋に違󠄂ひがあり、新聞相互の統一がとれぬばかりでなく、敎科書の方の步調󠄁も揃はず、却つて新たな混亂を惹き起󠄁してゐる。