「國語國字問題を考へる有志の會」(八の54)

前項の國會の動きと連繋して「國語國字を考へる有志の會」(代表・小堀桂一郎)が昭和六十年八月に結成され、同年九月十五日に「國語國字問題の論議を國會に要望す」を有識者に送附すると共に、國語國字問題を考へる國民集會を開催した。この緊急提言は「常用漢字表の趣旨は生かされてゐない」として「どの新聞を開いて見ても、『ふ頭』『わい曲』『しっ責』『ろっ骨』『めい福』のやうな、漢字と假名との混ぜ書きの例は依然として罷り通つてをり、動植物名も亦、相變らず片假名書きにされてゐます。更に新たに生れてきた子の命名の文字の制限は傲然と行はれてゐます」と訴へ、國語審議會が公表した「改定現代假名遣い(案)」への疑問を述べ、自由民主黨が出版した『國語の諸問題』の見識を稱へ、國會における滝沢幸助議員の活動を紹介し、歴史的な地名の改變も法改正によつて終止符が打たれたことに觸れた後、「國會論議に望む五點」として、
一.「公用文作成の要領」に示す混ぜ書きの許容の規定(他によい言いかえがなく、または言いかえをしてはふつごうなものは、常用漢字にはずれた漢字だけをかな書きにする)は、常用漢字表の趣旨に背くので廢止すべきである。
二.公用文の書式は國語の傳統に從つて、縱書きを原則とすべきである。
三.學校教育に於ては、古典との繋りを重んじ、正漢字歴史的假名遣の學習を認知すべきである。
四.教科書に掲載乃至引用される教材の文章に就ては、原典の表記をその儘に保つべきである。
五.戸籍法第五十條に定める所謂人名漢字制限の規定は撤廢すべきである。
の五點を擧げてゐる。この提言の贊成者は昭和六十二年五月末現在で二百三十四名に達した。



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