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六-三 山田の『假名遣󠄁の歷史』と「カナモジカイ」の建議書

 昭和四年七月󠄁、山田孝雄の『假名遣󠄁の歷史』が刊行された。本書は「假名遣󠄁の起󠄁源」「定家假名遣󠄁」「復古假名遣󠄁」「定家假名遣󠄁」「明󠄁治時代以來の假名遣󠄁」「回顧󠄁」の六章と「附錄一、文部省の假名遣󠄁改定案を論ず 二、右の意󠄁見發表前󠄁後の事情󠄁」より成󠄁る假名遣󠄁に關する極めて學問的󠄁な良書である。

 同四年七月󠄁「カナモジカイ」は「カナ遣󠄁イ改正ニツイテノ建議」を文部省へ提出、次󠄁いで九月󠄁十八日總理大臣濱口雄幸に「國語ト國字ノ改善ヲナスコトニツイテノ建議」を提出した。それは「政府ハ國語ト國字ノ改善ヲ重要󠄁政策ノ一トシテ着手セラルルヨウニ建議イタシマス」といふもので、その理由は左の通󠄁りである。

*一、世間デハ漢字ヲ濫用シテ、耳ヲモツテ聞イタダケデハワカラヌ國語ヲ盛󠄁ンニ用イテイル。コノコトハ、ヨイ國語ヲ保ツテメニ、ハナハダ憂ウベキコトデアル。

 二、法律ヲモツテ漢字ノ數ヲ最小限ニ減ズルコトニスレバ、敎育ハ簡易ニナリ、經費ハヘラサレ、事務ソノホカアラユルコトガ便利ニナル。

 三、コレマデノ歷史カナヅカイ法ヲ發音󠄁主󠄁義ニ改ムルコトハ、敎育ノ重荷ヲ輕クシ、實生活ヲ便利ニスルコトニナル。

 四、國民生活ニモツトモ適󠄁當スル國字ノ調󠄁査硏究ヲナシ、改善ノ實行ヲナスコトハ現代ニオイテモツトモ急󠄁務デアル。

 以上ハ二三ノ主󠄁要󠄁點ヲアゲタダケデアル。國語ト國字ノ改善が國民生活ヲヨクスル結果ニナルコトハ數エツクサレヌホドニアル。ユエニ國民ハコレヲ希望󠄂シテイル。政府ハコノ機運󠄁ヲ察シテ、文化󠄁政策上ノ重要󠄁施設トシテスミヤカニ適󠄁當ノ處置ヲトラルルコトヲ望󠄂ム。


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