五-二 『疑問假名遣󠄁』
大正元年九月󠄁、本居淸造󠄁が擔當した『疑問假名遣󠄁』前󠄁編󠄁が國語調󠄁査會より刊行された。なほ後編󠄁は四年一月󠄁に完成󠄁してゐる。その編󠄁纂の趣旨は、「例言」によると、今日假名遣󠄁はほぼ一定してはゐるが、中には「其ノ標準ヲ古書ニヨリテ定ムルコトノ、不可能ナルモノナキニアラズ。ココニ於テ、學者ハ或ハ傍訓ニ據リ、或ハ語源ヲ究メテ、是等ノ疑問假名遣󠄁ヲ推定セントセリ。本會ハ其ノ學說ト古今ノ實例トヲ蒐集シテ、是ガ硏究ノ資󠄁料ニ供セントシ、マヅ本書ヲ刊行スルコトトセリ」といふことである。その前󠄁編󠄁は問題となる語二百八十九語を摘出し、その假名遣󠄁に對する諸家の學說を紹介したものであり、後編󠄁は假名遣󠄁に聞する史料をもとに歷史的󠄁假名遣󠄁を考究したもので、一例を擧げれば、「用ゐる」については二十四分類考察しワ行上一段を正しいと論定してみる。
なほ、大正二年六月󠄁、行政整理の一環として國語調󠄁査委員會の官制が廢止された。