正假名遣(平成二十年修正版)

平成二十年十二月八日

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■■ 前 書 き ■■

  1. 假名遣は藤原定家に發し、契冲・本居宣長等による理論的改訂が基礎となり、更に明治以降の改良研究によって、近代的な表記法として整備されてきた。これを一般に「歴史的假名遣」と稱する。表題の「正假名遣」とは、假名を用ゐて現代の國語を書き表す正統的な規準として、歴史的假名遣を確認したものである。昭和二十一年『現代かなづかい』實施以前の慣習を尊重し、新しい知見に基いた修正をいくつか施した。 特に時代や地域を超越して國語を統一的に表記できる整合性を重視した。
  2. この假名遣は語の書き方を示すものであり、讀み方や發音を表はさうとするものではない。點字・ローマ字などを用ゐて國語を書き表す場合のきまりとは必ずしも對應するものではない。
  3. この假名遣は、法令・公用文書・新聞・雜誌・放送など、一般の社會生活はもちろん、科學・技術・藝術その他の各種專門分野や個々人の表記においても實踐される事を期待する。
  4. この假名遣は、文語體・口語體を問はず、あらゆる現代文、および翻刻された古典文に適用する。原文のままとする必要のあるもの、固有名詞などでこれによりがたいものは除く。
  5. 字音假名遣は我が國で長く實用・研究され、この假名遣の重要な部分を擔ふものである。漢字に由來する言葉は漢字で書くのが國語の不文律であるが、振り假名や語彙の排列檢索の上では勿論、今日次第に増えてきた假名書きの場面でも、字音假名遣が博く用ゐられることで普及の促進が望まれる。本文に於て字音假名遣に關し特に言及・記述が多いのはこのためである。
  6. 教育現場においては、この假名遣の背景をなす國語の音韻原則について、理解を深めるやうな教授が望まれる。
  7. 五年後の平成二十五年をおほむねの目途に、内容を再檢討することとする。

■■ 凡 例 ■■


■■ 本 文 ■■

■第一章 假名遣

  假名遣とは、同音の假名を語によって使ひ分ける社會的な規範である。和語・字音・振假名・引用文などにかかはらず、特に意圖しない限り、同一の文中で假名遣は統一する事が望ましい。

  以下に示す假名は、互ひに混同する可能性があるため、語に從って書き分ける。漢字音由來の語は、「いち(一把)」「か(甲斐)」「たいふ(大夫・タユー)」など少數の例外を除き、漢字一字に相當する部分ごとに書き分ける。これ以外の假名遣に係らぬ部分は慣用に從ふ。例示した語の内、「/」以下は漢字音由來である。

 (一) 「ぢ・づ」と「じ・ず」

例 い(出) いで(出) / かに(直) あん(杏) めい(明治)

 (二) 「ゐ・ゑ・を」と「い・え・お」

例 る(入) る(居) あ(青) こころ(心得) / がく(描) だ(橙) る(類) す(水)

 (三) 「くゎ・くゐ・くゑ」と「か・き・け」
    「ぐゎ・ぐゐ・ぐゑ」と「が・ぎ・げ」 (漢字音に限る)

例 / かいくゎい(開會) ぐゑっくゎう(月光) くゐちょう(貴重)

 (四) 語頭以外の「-は・-ひ・-ふ・-へ・-ほ」と「-わ・-い・-う・-え・-お」
     (助詞「は」「へ」も含む。漢字音は「-い・-う・-ふ」の形に限る)

例 あるは(或) さいはひ(幸) い(言) / いち(一把)

 (五) 「あふ」と「あお」 (和語に限る)

例 あふひ(葵) あふる(煽) たふる(倒)

 (六) 長音の「あう」と「おう」と「あお」と「おお」 (漢字音は「あう」または「おう」の形に限る)

例 たうげ(峠) はなさう(話) おとうと(弟) / ~のやうな(樣)
  なほし(直衣) ほのほ(炎) とを(十)

 (七) 長音の「いう」と「ゆう・いゅう」

例 ひうが(日向) よろしう(宜)/ しょっちゅう(始終)

 (八) 長音の「えう」と「よう・いょう」

例 ~いたしませう ~しよう けふ(今日) / てふてふ(蝶々)

 (九) 撥音の「-む」と「-ぬ」と「-ん」

例 いは(言) いは(言) すす で(進)/ さみ(三位)

 これ以外の部分、たとへば「め(梅)」「しる(走)」「一月」などは、假名遣の正誤判定に含めない。同樣に濁點や半濁點の使用、また小書き假名の使用なども、假名遣に係る問題とは看做さない。


 (二)(四)(五)を綜合すると、以下のやうな組合せとなる。

  (二)   (四) (五)
      
 
   
 
(あ)ふ
  語頭以外で出現

 (六)(七)(八)などを綜合すると、以下のやうな組合せとなる。

  (六) オー (七) ユー・イュー (八) ヨー・イョー
φ おう
 をう
 
をふ
おほ


をを
あう
 わう
  はう
あふ

  あを



ゆう


ゆふ
いう

いふ



よう


やう
えう

えふ

y  よう よふ よほ   やう      
こう こふ こほ   かう
 くゎう
かふ かほ かを きゅう   きう きふ きょう きゃう
 くゐゃう
けう けふ
ごう ごふ     がう
 ぐわう
がふ         ぎう   ぎょう ぎゃう げう げふ
そう       さう さふ     しゅう   しう しふ しょう しゃう せう せふ
ぞう       ざう ざふ     じゅう
ぢゅう
  じう じふ じょう じゃう
ぢゃう
ぜう
でう

でふ
どう どふ     だう だふ    
とう   とほ とを たう たふ     ちゅう   ちう   ちょう ちゃう てう てふ
のう のふ のほ   なう なふ なほ       にう にふ にょう   ねう  
ほう ほふ ほほ   はう はふ             ひょう ひゃう へう  
ぼう ぼふ     ばう ばふ         びう     びゃう べう  
ぽう ぽふ     ぱう ぱふ             ぴょう ぴゃう ぺう  
もう       まう     まを           みゃう めう  
よう よふ よほ   やう                      
ろう ろふ     らう らふ     りゅう   りう りふ りょう りゃう れう れふ

■第二章 假名遣當否の判定基準

(一) 假名遣の判定は、平安中期以前の文獻に基礎を求め、該當する音韻が合流する以前の用例に從ふ。

(二) 判定が困難なもの、および音韻合流以降の語は、語の構成による類推または一般的な習慣に從ふ。唐宋音より前の漢字音は、韻書による類推を妨げない。

例 くら(鯨) 向正面 ぐゎんぢゃう(頑丈) めんえう(面妖)

(三) 漢字表記の標準的音訓に從っても差支へない。

例 きふ(氣負・競) びす(惠比須・蛭子) おもく(思惑) けはい(氣配) すま(住居)

(四) 近年に至って訂正された語については、舊來の習慣を俄かに否定しなくてよい。

例 用る→用る つく→つく(机) ばうし→ぼうし(帽子) る→る(類) っくゎう→ぐゑっくゎう(月光)

(五) 口語用言の活用語尾は文語の假名遣を繼承する

 注意すべき動詞とその語例、文語口語の對應關係を左表に示す
  文語動詞 口語動詞 關聯語
ア行下二段 (得) こころる(心得)  
ヤ行上一段 る(射)、る(鑄)    
上二段 、悔、報  
下二段 、絶、[他多數] る、絶る、絶やす  
ハ行四段 、思、[他多數] う、言ます、言  
上二段 、強、[他多數] て、強  
下二段 、耐、[他多數] る、耐  
ワ行上一段 る(居)、率る、用   る(居)はラ行四段
下二段 、据、飢 →する(坐)はラ行四段
ザ行下二段 (混)、交 混ざる、混ぜる、ま  
ダ行上二段 、閉、[他多數] →とざす(閉)はサ行四段
下二段 、出、[他多數] 撫でる  

  語幹の假名遣は活用により變化しない

 例 おはやう(早)、あふせ(逢瀬)、いはふ(祝)けふこそ、もらうた(貰)

  口語特有の意志・推量の助動詞「う」・「よう」は文語助動詞「む」に對應し、動詞の未然形にのみ接續する。
  サ變動詞「する」及び助動詞「です」には夫々「う」を伴ふ專用の未然形「せ」「でせ」がある

 例 三遍廻つて煙草にう、樂しかつたでせ

  なほ「よう」が接續する上・下一段活用の未然形は、樣態の接尾辭「やう」が接續する連用形と同型なので判別に注意する。

 例  話を進めようにも進めやうがない(「進める」下一段動詞)
 參考 話を聞かにも聞きやうがない(「聞く」四段動詞)

(六) 音便や連濁などにより語音が變化し、假名遣の問題が生ずる場合、慣用に留意してなるべく本來の綴りと近いものに從ふ。

例 かうし(格子) せかいゅう(世界中) して(さうして)

  イ音便・ウ音便・促音便・撥音便は、それぞれ と書く。

例 書た 向側(←向ひ側) 思てもみよ(←思ひて) 思てもみよ 學だ びちゅう(備中) びご(備後)

  直音や拗音が長音化したものは、同じ母音を重ねる。但しエ段・オ段は「えい」「おう」となる。「ねさん(姉)」などはこの例外である。

例 せい(背) しいか(詩歌) にょうばう(女房)

(七)本來の語音とその變化形が同義で共存する場合、本來の綴りに從ふ。

例 さうきふ(早急) めをと(夫婦) てふてふ(蝶々) てんわうせい(天王星)

  文章の調子などにより、「さっきふ」「めうと」などと表現する事は妨げない。

(八) 複合語において、先頭語語尾と後續語語頭の假名遣が重なる場合、先頭語に從ふ。

例 はる(這入) 東京都あめ(青梅)市 群馬縣さたり(澤渡)温泉 平泉もつう(毛越)寺

  但し、後續語が假名一文字だけの場合、後續語を殘す。

例 愛媛縣にはま(新居濱)市 むか(向井)去來

(九) 漢音と呉音が同音かつ假名遣が異なる場合は漢音に從ふ。但し佛教關係の語彙は呉音が優先となる。

例 はふりつ(法律・漢音) ほふし(法師・呉音)

  異る字義でありながら同音かつ假名遣が異なるものは、文脈における字義を考慮する。

例 (於・おいて) (於・ああ) しょう(証(證)・あかし) しゃう(証・いさめる)

■■ 附 記 ■■

 今囘、これまでの社會的通念としての「舊假名遣」や「新假名遣(現代假名遣)」を正した點は以下の如くである。

○「假名遣」の定義

  【第一章】 「假名遣とは、同音の假名を語によって使ひ分ける規則である」事を確認した。

 昭和六十年國語審議會答申『改定現代假名遣い(案)』前文で示された「假名によって語を表記するときのきまり」は誤りと考へた。

○假名遣判定の根據

  【前書き】 昭和二十一年『現代かなづかい』實施以前の慣習を、濫りに變更を加へぬやうに受け繼ぐことを前提とした。

  【第二章】 平安中期以前の文獻に見られる用法は、假名遣を判定するための基礎であるが、特定の時代を絶對視する事は避けた。

○假名遣研究の反映

  【第一章】 「赤穗」「青梅市」など、從來の説明では不十分であった語も漏さぬやうにした。

 近年、系統的に訂正された假名遣は、漢字音に多い。重要なものは以下の四種類である。

 和語はほとんどが個別的な訂正であるため、詳記しない。重要なものは、

 などであらう。また、「まをす(申)」「くゑる(蹴)」「ゑふ(醉)」などは、古形であり、それぞれ「まうす」「ける」「よふ」も認める。


■■ 參 考 文 獻 ■■

・新舊かなづかい要説 三宅武郎著 昭和二十三年 明治書院
・増訂版私の國語教室 福田恆存著 昭和五十八年 中央公論社中公文庫
・歴史的假名遣い 築島裕著 昭和六十一年 中央公論社中公新書
・假名遣ちかみち 山田孝雄著 昭和十八年 國語問題協議會(平成七年山田忠雄訂補)
・字音假名遣いについて 沼本克明著 平成七年 築島裕編『日本漢字音史論集』(汲古書院)所收
・學研漢和大字典 藤堂明保編 昭和五十三年 學習研究社
・全譯漢辭海 佐藤進他編 平成十二年 三省堂
・現代かなづかい 昭和二十一年 内閣告示第三十三号
・「現代かなづかい」の実施に関する件 昭和二十一年 内閣訓令第八号
・現代仮名遣い 昭和六十一年 内閣告示第一号
・改定現代仮名遣い 昭和六十年 国語審議会答申

■■ 附 表 ■■

 漢字音の研究は經典讀誦の分野で長い歴史があり、また近年の新しい知見も多い。しかしながらこれらの成果が字音假名遣によく反映されてゐるとは言ひがたく、實務上からも輕視されがちである。字音の扱ひは此の(又は歴史的)假名遣で最も重要な事項の一つであるので、字音假名遣の意味や理論などを詳述する。またこれに就いての理解を深めるやうな教育的配慮が望まれる。

 字音假名遣において、長音および撥音は、おほむね該當する漢字の所屬韻によって決定できる。但し呉音の一部に不規則な字が存在する。所屬韻は、通行の漢和字典に記載するものを參照されたい。多くの字典は簡略化された「平水韻(詩韻)」であるが、近年出版のものには『廣韻』を示したものもある。後者の方がより正確ではあるが、平水韻で間にあはぬわけではない。平水韻と廣韻の對應については、通行の對照表で把握されたい。

 ごく大まかに言へば、各々の韻は「あ系統(あ・え)」と「お系統(お・い・う)」に二大別できる。え は あ の變化形、い・う は お の變化形であると理解されたい。即ちあいわうくゎん や、えうえつえふ などは前者、おういううつ などは後者の音である。兩者は漢音では截然と分れるが、呉音の一部には例外が少なくない。

 また、「十六攝」といふ韻の分類法がある。成立時代がやゝ下る憾みはあるが、韻の性格を把握するためには便利なものであり、字音假名遣を考へるためには、この程度の粗い分類でも十分に役に立つ。「」各攝は「あ系統(あ・え)」に、「」各攝は「お系統(お・い・う)」の韻から成る。


平水韻・字音假名遣對照表

 通行の漢和字典に記載された「平水韻(詩韻)」と、字音假名遣の對應關係を示す。

平聲 上聲 去聲   入聲   オー ユー ヨー ウー エー -ン
01東
02冬
01董
02腫
01送
02宋
-ong 01屋
02沃
-ok おぅ/をぅ (い)ょぅ (い)ゅぅ うぅ    
03江 03講 03絳 -ang 03覺 -ak あぅ*          
04支
05微
04紙
05尾
04シ
05未
-oi                
06魚
07虞
06語
07麌
06御
07遇
-o         いゅう
(慣用音)
うう
(慣用音)
   
08齊

09佳
10灰
08薺

09蟹
10賄
08霽
09泰
10卦
11隊
-ai             あい/えい  
11眞
12文
13元
11軫
12吻
13阮
12震
13問
14願
-on 04質
05物
06月
-ot           おん/いん
うん/いゅん
13元
14寒
15刪
01先
13阮
14旱
15潸
16銑
14願
15翰
16諫
17霰
-an 06月
07曷
08黠
09屑
-at           あん/えん
02蕭
03肴
04豪
17篠
18巧
19皓
18嘯
19效
20号
-ao     あう* えう        

05歌
06麻
20カ
21馬
21箇
22マ
-a                

07陽
08庚
09青
22養
23梗
24迥
23漾
24敬
25徑
-ang 10藥
11陌
12錫
-ak あぅ/(く)ゎぅ (い)ゃぅ     えぃ(梗攝)  
10蒸 24迥 25徑 -ong 13職 -ok おぅ (い)ょぅ        
11尤 25有 26宥 -ou     おう   いう うう    
12侵 26寢 27沁 -om 14緝 -op おふ   いふ     おむ/いむ
13覃
14鹽
15咸
27感
28em
29hm
28勘
29艷
30陷
-am 15合
16葉
17洽
-ap あふ* えふ       あむ/えむ

江・效・咸攝の呉音は、一部で「おう」「おふ」となる。漢音でも、豪(皓号)韻の唇音聲母字は、「おう」である。例へば「ぼう(帽)」「もう(毛)」の如くである。

この表の他に、長音「イー」が存在するが、「しい(弑)」「ひい(贔)」「せい(世)」「しいか(詩歌)」など、いづれも長音化した慣用音である。


各攝の典型的漢字音

各攝で典型的に現れる漢字音を、あ系統・お系統で對照させたものである。

「一二等」とは原音で直音、「三四等」とは原音で拗音に相當する。

あ系統(あ・え) お系統(お・い・う)
一二等 三四等韻 呉音特有 一二 三四等韻 呉音特有
ang あう     ong おう   いゅう いょう う/うう/いゅ
ak あく       ok おく いく いゅく
うく
いょく いく
ai あい
くゎ(い)
えい
(く)ゑい
  え/
(く)ゑ
oi   うい   /お
うい/ゐ
(く)
a
(く)ゎ
  や/いゃ
くゎ
  o お/う   いゅ(注1) いょ  
a     (く)ゑ
an あん
(く)ゎん
えん
(く)ゑん
 
on おん
ゐん
いん
(く)ゐん
いゅん
うん
   
at あつ
くゎつ
えつ
くゑつ
 
ち/~ち
ot  
おつ
いつ いゅつ
うつ
  ~ち
au あう(注2) えう   / ou おう いう うう   う/お/いゅ
ang あう
(く)ゎう
  いゃう
(く)ゐゃう
  ong おう     いょう う/お
ak あく
(く)ゎく
  いゃく
くゐゃく
  ok おく     いょく
くゐょく

いき
ゐき
ang あう
(く)ゎう
えい
(く)ゑい
   
ak あく
(く)ゎく
えき
くゑき
   
am あむ えむ   om   いむ     おむ
ap あふ えふ   op   いふ     おふ

攝・字音假名遣對照表

 前表にもとづき、假名遣上の問題となる部分を整理したものである。蟹などは、各攝を表し、それぞれの韻名は省略した。

  -a,e -ang,eng -au,eu -ap,ep   -am,em -an,en  
あ系統 [い][(く)い]
  
[ぃ][(く)ぃ]
  
    エー [む]
  
[ん]
  
エン
  [(い)ぅ]
  梗宕
  [う]
  
[ふ]
  
ヨー
  [ぅ][(く)ぅ]
  江梗宕
[う]
  
[ふ]
  
オー [む]
  
[ん]
  
アン
    [ぅ]
  *
[う]
  *
[ふ]
  *
[む]
  *
[ん]
  *
オン
お系統   [(い)ぅ]
  通曾
[ぅ]
  通曾
[う]
  
[ふ]
  
[む]
  
[ん]
  
[いう(本來い)]
  (慣用音)
[(い)ぅ]
  
[う]
  
[ふ]
  
ユー [む]
  
[ん]
  
イン
[う(本來う)]
  (慣用音)
[ぅ]
  
[う]
  
  ウー   [ん][いん]
  
ウン
  -o -ong,ing -ou,iu -op,ip   -om,im -on,in  

(*注) 攝の呉音は、一部でお系統に混入し、「おう」「おふ」「おむ」などとなる。漢音でも、豪(皓号)韻の唇音聲母字のみ例外的に「おう」である。例へば「ぼう(帽)」「もう(毛)」の如くである。


【長音の語例】長音【オー】

  和語 漢語(お系統)  漢語(あ系統) 
おう おふ おほ おを あう あふ あほ あを 流攝(ou) 通・曾攝(ong) 深攝(op) 效攝(au) 江・梗・宕攝(ang) 咸攝(ap)
オー [おう]
負うて/媼
  [おほ]
大きい/狼
    [あふ]
扇/近江
  [あを]
青梅市/青海島
/素襖
[おう]
歐米
[おぅ]
一應/鷹揚な
/郭公
  [あう]
奧義
[あぅ]
鸚鵡/櫻花/中央
[あふ]
押收/凹凸
  [をふ]
終ふ 
  [をを]
雄々しい 
[わう]
弱う
        [をぅ]
    [わぅ]
王子/横柄
/往々にして
 
        [はう]
買はう/怖う
ございます
              [はぅ]
周防國 
 
コー [こう]
小路/紺屋
/向う側
[こふ]
[こほ]
蟋蟀/凍る
  [かう]
咲かう/赤う
/かうして/向う側
[かふ]
岡豐城/城飼郡
[かほ]
赤穗/伊香保*
[かを]
赤魚鯛
[こう]
結構/浩瀚
[こぅ]
歳の功/公平
/鴻巣市
[こふ]
[かう]
皓々/恰好/咆哮
[かぅ]
慷慨/鮟鱇/香落溪
[くゎぅ]
蒼惶/荒唐/彷徨
[かふ]
龜の甲/太閤
ゴー         [がう]
急がう/長う
      [ごう]
皇后
[ごぅ]
[ごふ]
業/永劫
[がう]
傲慢/番號
[がぅ]
江州
[ぐゎぅ]
轟々と
[がふ]
都合
ソー         [さう]
話さう/淺う/さうして
[さふ]
宍粟郡
    [そう]
御馳走/吹奏
[そぅ]
僧/一層/失踪
  [さう]
掃除/早急
[さぅ]
愛想/颯爽/錚々たる
[さふ]
插話
ゾー                 [ぞう]
[ぞぅ]
増加/憎惡/贈與
  [ざう]
捏造
[ざぅ]
象/藏書/内臟/佛像
[ざふ]
雜煮/雜炊
トー [とう]
  [とほ]
遠い/通す
[とを]
[たう]
峠/痛う/勝たう
/有難う/蕗の薹
      [とう]
淘汰/到頭
[とぅ]
春宮/統一
/燈籠/葛藤
  [たう]
到底/鬱陶しい
[たぅ]
唐芥子/螳螂
[たふ]
塔/答辯/出納
ドー [どう]
どうして
[どふ]
集ふ
              [どぅ]
銅/艨艟
/運動/空洞
  [だう]
龍膽/葡萄
[だぅ]
[だふ]
問答
ノー   [のふ]
昨日/整ふ
[のほ]
  [なう]
死なう/危なう
ございます
[なふ]
賀名生
[なほ]
直衣/直方市
    [のう]
堪能/農家/濃紺
  [なう]
腦/苦惱
  [なふ]
納入/加納
ホー     [ほほ]
頬/朴/酸漿
  [はう]
葬る
[はふ]
はふり投げる
/はふはふの體
    [ほう]
呆ける/信天翁
[ほぅ]
奉祝/俸給
/豐年/靈峰
[ほふ]
法會
[はう]
庖丁/咆哮
[はぅ]
彷徨/髣髴/し放題
[はふ]
法律/琺瑯びき
ボー [ぼう]
犬吠崎
      [ばう]
遊ばう/飛ばう
      [ぼう]
某/貿易/帽子/無謀
  [ぼふ]
正法
  [ばぅ]
坊主/泥棒/膨脹
[ばふ]
貧乏
ポー                   [ぽぅ]
割烹/連峰
[ぽふ]
説法
[ぱう]
鐵砲
[ぱぅ]
奔放/立方
[ぱふ]
立法
モー [もう]
もう一つ
      [まう]
申す/甘う/休まう
    [まを]
申す/眞岡
[もう]
毛氈/毛越寺
[もぅ]
朦朧/艨艟
    [まぅ]
魍魎
 
ヨー※ [よう]
見よう/よう
ございます
[よふ]
醉ふ/迷ふ
[よほ]
催す
  [やう]
八日/早う
        [よぅ]
用/容易/中庸
    [やぅ]
樣な/芒洋/潰瘍/横笛
 
ロー   [ろふ]
陽炎/梟
    [らう]
祈らう/暗う
[らふ]
候文
    [ろう]
蜃氣樓/漏電
[ろぅ]
燈籠/朦朧/玲瓏
  [らう]
牢屋
[らぅ]
螳螂/蹌踉/外郎
[らふ]
蝋燭/臈たけた
現假名 おう  おお  おう 

※他に[えう]・[えふ]・[ゑふ]形あり、長音【ヨー・イョー】先頭項目を參照の事


長音【ユー・イュー】

 
  和語 漢語(お系統)
  ゆふ いう いふ 遇攝(u) 通攝(ong) 流攝(iu) 深攝(ip)
ユー [ゆふ]
夕方/結ふ
[いう]
言うて
[いふ]
言ふ*
  [ゆぅ]
勇氣/英雄/金融
[いう]
憂愁/郵便
/悠久/猶豫
[いふ]
指宿(揖宿)
キュー   [きう]
商人
    [きゅぅ]
弓術/鞠躬/窮々と
[きう]
休養/丘陵
/悠久/要求
[きふ]
汲々/急務
/給與/階級
ギュー     [ぎふ]
柳生
    [ぎう]
牛乳/求肥
 
シュー   [しう]
よろしう/舅
    [しゅぅ]
宗教/衆知/終了
[しう]
憂愁/刺繍
[しふ]
執着/習得
/侵襲/全集
ジュー   [じう]
小姑
    [じゅぅ]
充實/從順/臨終/絨毯
[じう]
柔軟 野獸
[じふ]
十姉妹/澀滯
/墨汁
        [ぢゅう]
住居
[ぢゅぅ]
重役/世界中
   
チュー   [ちう]
ちうて(と言うて)
  [ちゅう]
注文
[ちゅぅ]
中學/昆蟲
/しょっちゅう
[ちう]
躊躇/綢繆
/宇宙/蜘蛛
 
ニュー     [にふ]
埴生
    [にう]
柔和
[にふ]
入學
ヒュー   [ひう]
日向
         
            [びう]
稠繆
 
リュー   [りう]
狩人
    [りゅぅ]
龍/隆盛
[りう]
流離/流行/川柳
[りふ]
知立市(池鯉鮒)
現假名 いう・いゅう(*「言ふ」のみ「いう」)

長音【ヨー・イョー】

  和語  漢語(お系統) 漢語(あ系統)
  えう えふ 通・曾攝(ong) 梗・宕攝(ang) 效攝(eu) 咸攝(ep)
ヨー*     [よぅ]
用/從容/洶湧
[やぅ]
樣な/芒洋
/潰瘍/横笛
[えう]
窈窕/逍遥
/杳として
[えふ]
紅葉
    [ゑふ]
醉ふ
       
キョー   [けふ]
今日
[きょぅ]
共通/恐怖/洶湧
/吉凶/矜恃
[きゃぅ]
桔梗/鏡臺
/經文/故郷
[けう]
教育/矯正
/絶叫/鐵橋
[けふ]
脅威/協會/海峽
        [くゐゃぅ]
兄弟/熱狂
   
ギョー     [ぎょぅ]
凝集
[ぎゃぅ]
仰山/修行/人形
[げう]
連翹
[げふ]
業務
ショー [せう]
見ませう
  [しょぅ]
昇格/承諾/勝利
/自稱/從容
[しゃぅ]
詳細/正直/猖獗
/生姜/樟腦 菖蒲
[せう]
蕭條/逍遥
/山椒/芭蕉/燒酎
[せふ]
少輔
ジョー     [じょぅ]
冗談/乘馬/過剩/尉
[じゃぅ]
成就/上手/状態
/感情/古城
[ぜう]
饒舌
 
        [ぢゃぅ]
横笛/丈夫/市場
/令孃/*盆提燈
[でう]
蕭條/*一本調子
[でふ]
一帖/六疉
チョー [てう]
手水
  [ちょぅ]
徴收/清澄/重寶
[ちゃぅ]
膨脹/丁度/几帳面
[てう]
窈窕/銚子
/弔電/野鳥
[てふ]
手帖/野の蝶
ニョー         [ねう]
尿/しんねう
 
ヒョー     [ひょぅ]
氷山
[ひゃぅ]
評判/兵糧
[へう]
表裏/土俵
/縹渺/豹
 
ビョー       [びゃぅ]
病氣/平等
[べう]
秒讀み/縹渺
 
ピョー     [ぴょぅ]
結氷/信憑性
[ぴゃぅ]
論評
[ぺう]
票/本表
 
ミョー [めう]
茗荷
    [みゃぅ]
名代/明日/壽命
[めう]
妙技
 
リョー     [りょぅ]
丘陵
[りゃぅ]
魍魎/冷涼
[れう]
寮/料理
[れふ]
漁/獵
現假名 よう・いょう(*「盆提燈」「一本調子」など「ぢょう」

*→他に[よう]・[よふ]・[よほ]・[やう]あり、長音【オー】の「ヨー」參照


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