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二-十四 淸水の「平󠄁假名ノ說」と阪谷素の「質疑一則」

 明󠄁治七年四月󠄁に、淸水卯三郞は全󠄁文假名書の化󠄁學書『ものわり の はしご』を著はすと共に、五月󠄁の『明󠄁六雜誌』に「平󠄁假名ノ說」を發表した。淸水は先づ英語國語論を批判󠄁し、一語數訓などの例を擧げげて、漢字のむづかしいことを指摘した後、「又洋字ニ改ムル者ハ猶󠄁米飯ヲ以テ麵包󠄁ニ代ヘ味噌ヲ以テ酥酪ニ代ルカ如シ 其滋養󠄁ハ勝󠄁ルヽト雖トモ現ニ其不便ヲ觀ル」と、ローマ字にも反對し「又片假名ヲ知ル者モ亦天下多シトセズ 是ヲ以テ餘ハ只平󠄁假名ヲ用フルコトヲ主󠄁張ス」と述󠄁べ、同音󠄁異義語などは前󠄁後の關係で判󠄁斷できるし、英語などにも一語數訓のものがあるが誤󠄁解することはないと論じてゐる。

 また同七年六月󠄁、阪谷素(朗廬)は『明󠄁六雜誌』に『質疑一則」を發表し、萬國文字言語の統一主󠄁張し、世界語を提唱した。

*今明󠄁六社首唱ノ旗鼓ヲ建テ每社其規則次󠄁序ヲ討論シテ各國文字言語ノ長ヲ取り短ヲ舍テ混一ニ歸スルノ基本ヲ開キ各國ニ諮󠄁詢シ勉强耐忍󠄁百折不撓天地間同文同語ノ大益ヲ成󠄁ス 豈萬國古ノ大愉󠄁快ニ非ズヤ

 かういふ夢を描いてゐるのは「大愉󠄁快」には違󠄂ひないが、現實を動かす力とはならない。これは具󠄁體的󠄁な案を提示するまでには至つてゐないが、國際語を唱へた最初のものとして注󠄁目に値する。


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