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七-十七 『當用漢字字體表』

 昭和二十二年七月󠄁十五日、「活字の字體を整理統一する具󠄁體案を求め、敎科書に用いるものを統一するだけではなく、一般社會において用いられるものもこれにならうようにすすめて文字敎育の效果をあげ、敎育上の負擔を輕く」する目的󠄁を以て、新聞・印刷・官廳關係者二十數名から成󠄁る活字字體整理に關する協議會が設置され、十月󠄁までに小委員會九囘、總會八囘を開いて原案を作成󠄁してゐる。その原案を土臺に、國語審議會內に設けられた字體整理に關する主󠄁査委員會が、二十三年五月󠄁までに十六囘の會議を開いて「當用漢字字體表」を作成󠄁し、六月󠄁一日の第十四囘國語審議會總會の議決を經て、同日文部大臣に答申してゐる。しかし、文部省が內閣訓令・吿示により「當用漢字字體表」を公布したのは、翌󠄁二十四年四月󠄁二十八日であつた。原案を作成󠄁した主󠄁査委員は、安藤󠄁正次󠄁(委員長)稻田淸助、宮川菊芳、松坂忠則、西尾實、池上退󠄁藏、藤󠄁森良信、原富男、竹田復、澤登哲一の十名であつた。

 今囘の「當用漢字字體表」は、昭和十二年十月󠄁に發表された漢字字體整理案と大差のないものであるが、整理の範圍がやや擴大されてゐる。字體整理の無意󠄁味であることは既に指摘した通󠄁りであり、「 」の如く一點を省き、「 」の如く一棒を省き、「 」の如く形を惡くし、「 」の如く橫棒を短くし、「 」を「 」、 「 」を「 」、「 」を「 」、「 」を「 」、「 」を「 」、「 」を「 」、「 」を「 」、「 」を「 」、「 」を「 」、「 」を「 」などに改めることによつて、どれほどの利益があるといふのであらうか。しかも、「 」は「 」としながら「 」はそのまま、「 」は「 」としながら「 」はそのままといふやうに當用漢字內における不統一はもとより、整理の範圍を當用漢字に限つたため、「 」などの偏󠄁や旁には依然として舊い形が殘つてゐるわけである。このやうな整理は結局國民に二重の負擔を荷すものであるから、一日も早く新字體を撤廢して舊に復すべきである。


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